男性の髭は人によって濃さが違います。
髭が濃い人は、午前中に剃った髭が午後にはもう生えてきてしまうということもあります。
男らしさの象徴ともいえる髭ですが、濃い人にとっては毎日のお手入れが面倒なので、悩みの種となる場合もあることでしょう。
体毛であれば衣類などで隠れて見えないこともありますが、顔に生えている髭の場合、一日中隠しておくことは難しいものです。
そこで、髭が濃くなる原因と、髭剃りがもたらす肌へのリスク、正しい日常のお手入れ方法について詳しくご紹介します。
髭が濃くなる3つの原因
髭が濃くなる原因には、大きく分けて3つのことが挙げられます。
遺伝
1つ目が遺伝です。人間の体に生える毛は、形質や濃さに個人差はあるものの、多少なりとも遺伝の影響があると考えられています。
父親や祖父など家族に髭が濃い人がいると、その性質が受け継がれる場合があります。
生活スタイル
2つ目の原因は生活スタイルです。
喫煙をしていたり、偏った食事を取っていたり、睡眠不足であったりすると、髭が濃くなってしまうケースがあります。
また、ストレスが増えたり、年齢を重ねたりすることにより濃くなる場合もあります。
これらの生活スタイルに共通する点は、ホルモンバランスが崩れやすい生活だということです。
たとえば、タバコに含まれるニコチンには、男性ホルモンを活発に分泌させる作用があるとの研究があります。
ストレスを感じると男性ホルモンの一種であるコルチゾールが分泌されます。
コルチゾールが分泌されると男性ホルモンの分泌がさらに促され、過剰に男性ホルモンが増える要因となるのです。
また、年齢を重ねると脳の活動する力が低下しやすい傾向になります。
脳の活動が衰えると男性ホルモンの分泌を正常に行えなくなり、過剰な分泌を促してしまうことがあります。
睡眠不足の場合も、脳の活動力の低下により同様の現象が生じやすくなります。
髭の処理方法
そして3つ目の原因が髭の処理方法です。
肌に刺激を与えるような剃り方を繰り返し行うと、髭がさらに濃く生えてしまうことがあります。
また、毎日の髭の処理が面倒なことから、髭剃りの頻度を少なくするために髭を根元から抜いている人もいるでしょう。
髭の毛を毛根から抜き取ることで、次に生えてくるまでの時間を延ばすことは可能です。
しかし、毛根の下にある毛乳頭は、毛細血管から栄養を取り込んでいます。
髭を引き抜くことで毛乳頭と毛細血管とのつながりは一度切れてしまいますが、その後、さらに太く頑丈な毛細血管が再生します。
毛細血管が太くなると、以前にも増して多量の栄養素を取り込めるようになります。
そのため、再び生えてくる毛もしっかりとした濃い毛になることがあるのです。
男性ホルモンと髭の関係
すべての人間は男性ホルモンと女性ホルモンの両方を持っています。
男性でも、男性ホルモンだけではなく女性ホルモンも持っているのです。
それぞれのホルモンのバランスは、体にさまざまな影響を与えます。
女性ホルモンの量が多い人は、女性らしい特徴をもった体が作られやすくなります。
男性ホルモンの量が多いと、男性的な体になりやすい傾向があります。
男性的な体の特徴の1つに髭がありますが、濃い髭も男性ホルモンの働きによるものです。
男性ホルモンが優位となると、髭が濃くなりやすいのです。
男性ホルモンの中でも、髭の生成に関わりのあるホルモンが、テストステロンとジヒドロテストステロンです。
テストステロンは男性ホルモンの90パーセントを占めています。
このホルモンは、骨格を良くしたり、筋肉を増やしたりする役割のほかに、体毛を濃くするように促す働きも持っています。
もうひとつのホルモンであるジヒドロテストステロンは、テストステロンが形を変えたものです。
これは、男性胎児の性器の形成をする役割を持つ一方で、ニキビなどの原因ともなるホルモンでもあります。
髭の生育には、この2つのホルモンが大きくかかわっています。
血液中のテストステロンが毛乳頭細胞の中に入ると、酵素の働きでジヒドロテストステロンに変換されます。
そして、その後ジヒドロテストステロンが受容体と結合することで成長因子が作られ、髭が成長するのです。
このような生成は他の体毛においても同じ仕組みとなっています。
そして、髭が生える箇所のようにもともと体毛が濃く生えやすい箇所では、特にジヒドロテストステロンの生成が活発となっているのです。
抜毛症とは
髭が濃い人の中には毎日の生活の中で、自分の顔をふと見た時に髭の状態が気になってしまうという人もいることでしょう。
日常のお手入れをしっかりと行っていても、伸びてくる髭が目に付き、常に取り除きたいという感情に突き動かされることもあります。
なかには、沸き起こる感情が抑えきれずに、目に付く度に髭を抜いてしまうという人もいます。
このような行動に覚えがある人は、「抜毛症(ばつもうしょう)」となる危険があります。
抜毛症とは健康に生えている毛を無理に引き抜くことによって、脱毛斑ができてしまう症状です。
脱毛斑とは、毛が抜えているべき場所に、まばらに毛のない箇所が生じる状態です。
抜毛症は精神疾患の1つで「抜毛癖(ばつもうへき)」とも呼ばれています。一般的には子ども、特に思春期の女子に多く見られる症状といわれています。
しかし実際には、成人や男性の発症も少なくありません。
抜毛症は明確に1つの原因から生じる症状ではなく、いくつかの要因が重なり発症するといわれています。
一般的に多い原因の1つが精神的な不安定さです。
ストレスや日常の不安、イライラといった感情が原因となることがあります。
ネガティブな感情が生じた際に、自分の気持ちをなだめて、落ち着かせようと、精神安定のための1つの対策として抜毛をしてしまうと考えられています。
髭が濃いことを過剰に気にして髭抜きをしてしまう人は、抜毛症予備軍である可能性が高くなります。
場合によっては今後、脱毛斑が生じるリスクもあるのです。
毛を抜く行動は意識的に行うのではなく、無意識により起こす行動といわれています。
このため、自覚して治すことが難しい症状でもあります。
そして、癖となる反復症状であるため、放置しておくと抜毛行動を繰り返し行い、深刻になってしまうケースもあります。
慢性的な症状となる前に、生活環境を改善したり、場合によっては精神科などで専門の医師に診てもらったりするなど、適切な対処をすることが大切です。
剃り方で変わる髭の生え方
髭が濃くなる原因の1つとなっているのが髭の剃り方です。
基本的には、剃ったからといって、髭が濃くなることはありません。
しかし、カミソリや電気シェーバーなどで処理する際に、肌に過剰に刺激を与えるような髭剃り方法を繰り返すことで、髭が濃くなってしまうことがあります。
毛にはもともと、外部からの衝撃や異物の侵入などから体を守る役割があります。
このため、髭剃りの際に受ける刺激により、肌を保護しようとする作用が活発に働き、髭がさらにしっかりと生え、濃くなってしまうのです。
髭が濃くなる剃り方の1つが、から剃りです。
急いでいるときや部分的に伸びた髭を見つけたときに、シェービング剤を使用せずに直接カミソリを肌にあてて髭を剃ってしまう人がいます。
しかし、カミソリの刃を直接肌にあてて動かすと、肌への負担がとても大きいのです。ですから、必ず専用のシェービング剤を使用して髭剃りを行いましょう。
肌への刺激が強い2つ目の方法が逆剃りです。
顎の髭は、カーブする部分があって剃りにくいです。そのため、毛の流れを考えずに、剃りやすい角度と方向でカミソリを動かしてしまいがちです。
肌への刺激を抑えるためにも、滑らかにカミソリを動かせるように、シェービング剤をしっかりと塗り、毛の流れに逆らわない方向に無理なくカミソリを動かすようにしましょう。
毛の流れに沿ってカミソリをあてることで、肌への負担を抑えて髭を剃ることができます。
肌に刺激を与える3つ目の方法が、カミソリを肌に押し付ける剃り方です。
特に髭が濃いことに悩んでいる場合、深剃りで十分に処理しておきたいという気持ちから、力を入れてカミソリを動かしてしまう人もいます。
しかし、カミソリを肌に強く押し付けると、肌に大きな負担がかかり、場合によっては肌を傷をつけてしまいます。
しっかりと剃りたい場合には力で対応せず、準備に力を入れるようにしましょう。
髭を剃る前に、ぬるま湯やホットタオルで十分に髭を蒸らして柔らかくすると、肌への負担を抑えることができ、しかも仕上がりもきれいになります。
おすすめの対策法
日常の中では、できる限り男性ホルモンの分泌が増えすぎないように生活することが、対策の1つとなります。
たとえばバランスの良い食生活を心がけることです。
健康的な体を維持するためには、さまざまな食事をバランスよく摂取することが大切となります。
なかでも、肉類を過剰に摂ることがないように留意してみてください。
野菜に比べて肉類は、男性ホルモンの分泌を活性化させるからです。
また、男性ホルモンの一種であるテストステロンを増加させる食べ物も、過剰な摂取を控えるとよいでしょう。
テストステロンを増やしやすい食材は、たとえば玉ねぎやニンニクです。
脳が男性ホルモンの分泌量を正常にコントロールできるようにするために、十分な睡眠を取ることも必要です。
夜更かしをして睡眠時間が減るような生活から、毎日十分な量の安定した睡眠を取る生活に変えていきましょう。
十分な量とされる睡眠時間は人によって異なりますが、おおよそ8時間を目安に取るようにすると万全です。
またタバコを吸っている人は、禁煙することが髭対策となることもあります。
自分が喫煙していない場合でも、タバコの煙が充満している環境で過ごす時間が長い人は、その影響を受けてしまいます。
空気の入れ替えをこまめにしたり、タバコの煙が多い場所はできるだけ避けるようにしたりすると良いでしょう。
他にも、男性ホルモンの分泌を促す筋肉トレーニングや筋肉増強剤の使用を行っている場合には、それらを少し控えめにしてみるのも一案です。
まとめ
濃い髭は、周囲が考えている以上に、本人にとっては深刻な悩みとなっているケースは少なくありません。
毎日の生活スタイルや小さな気遣いの積み重ねで対処できる場合もありますが、間違った方法により別のリスクを引き起こしてしまうこともあります。
また、遺伝などが原因の場合には、セルフケアだけでは改善しにくいものです。
そのような場合は、専門の医師に相談したり、プロの脱毛を受けたりといった対策をとっておくと、深刻な悩みもなくなるかもしれません。